会長&スタッフブログ

2014.09.23

愛国のゲルマンスピリット(ドイツ現地企業視察の旅)

 皆さんこんにちは。

お待たせしました。
7月14日~20日まで、ドイツ企業視察に行ってきました。
今回の視察ですが、今までと違う点があります。
今回はなんとドイツ現地企業の視察です。(今までは日系企業ばかりでした)
お邪魔させていただいたのは
・メルセデスベンツ【ブレーメン】
・スタインウェイ&サンズ【ハンブルグ】
・エアバス【ハンブルグ】
・フォルクス・ワーゲン(車体組み立て)【ヴォルフスブルク】
・    〃    (エンジン組み立て)【ザルツギッター】
・BMWモトアラート(二輪)【ベルリン】

なかなか興味をそそられる内容です。
大阪府工業協会の小西様、いつもありがとうございます。


さて、結論から言いますと、ドイツ企業の工場は、世界に点在する数多の日系企業の工場を見てきた私の目から見ますと・・まるで大したことありませんでした。
スキルはともかく、工場労働における規律や姿勢に関してはハッキリ言って東南アジアの日系企業の現地作業員のほうが勝っていると感じました。
例えばハーフパンツでの作業姿や、小型オーディオを持ち込んで音楽をならしながらの作業だとか、本当に「おいおい、こんなレベルかいや」と唖然とする光景が多々見受けられました。
しかし、彼らの「労働」という概念は決して表面的な部分だけでは計り知れないと感じたのも事実です。

摩訶不思議でした。
そんな未知の国、ドイツで見てきたことをダラダラと書き連ねたいと思います。
正直、ドイツに関しては皆さんのほうがお詳しいのでは・・と思いますので、知ったかぶりでいい加減なことは書かないように気をつける所存です。笑

今回はKLM航空にてアムステルダム経由でブレーメンまで行きました。


時差は-8時間。

ドイツ連邦共和国。
面積は357,121㎢で世界63位の大きさです。(日本は62位)
人口は約8,000万人。
一人当たりのGDPは約40,200ドル。
EU諸国においてもドイツ経済は別格の一人勝ち状態です。
先進的な工業技術を有するのは言うまでもなく、科学、医療、宇宙分野・・あらゆる技術に優れています。
ガソリン車やディーゼルエンジンを発明したのもドイツです。
ロータリーエンジンを発明したのもドイツ人です。
考案という点においてはドイツ人には天才的なひらめきがあるように思います。


★気候
今回まわったのはドイツの中でも北側に位置するところばかりでしたので、7月初旬としてはどこも気候は穏やかで非常に過ごしやすかったです。
本当に普通すぎて書くことがないほどでした。
意外かもしれませんが、去年の同じ時期に行ったロシアの方が暑かったというのが素直な感想です。

★ドイツの名物

こちらはヨーロッパで最初にできた信号です。

こちらはベルリンの壁。
崩壊直後は街の至る所にありましたが、今では一部を残してほとんど残っておりません。
ちなみにこちらの壁は街のド真ん中にあるのですが、見に来た観光客がなぜか次々とガムを張り付けるので異様な臭気を放つ最悪な状態です。
 
落書き。意外なことにドイツの街は本当に落書きが多いです。ベルリン、ブレーメン、ハンブルグ・・どこの街にももれなく落書きがありました。それもちょっとやそっとの数ではありません。一説にはベルリンの壁がある時代に西ドイツの若者がキャンバス代わりに壁に落書きをしていた名残りだといわれています。
ベルリンの中心部にあるユニクロ。
今年の4月にオープンしました。
ドイツでのユニクロは日本のそれとは位置づけが違い、「流行の最先端TOKYOからやってきたファストファッション」という感じの捉え方です。
我々から見る【ZARA】や【H&M】のようなものです。
決して「毎週土日に安売りの広告が入ってるからおじいさん、おばあさんも誘ってみんなで行きましょう」などというノリではございません。
価格は日本とほぼ同じでした。

こちらはドイツの老舗デパート【KaDeWe】(カーデーヴェー)。
ヨーロッパで二番目にデカいデパートだそうです。
中に入って見ますと日本のデパートとよく似ていました。
日本と決定的に違うのはデパ地下に該当するお総菜売り場は、ドイツでは最上階にあるという点。
なぜだか理由はわかりません。




 


ハンブルグの【ミニチュアワンダーランド】です。
フロアー一面ミニチュアのオンパレードです。
莫大な規模の割りに手抜きは一切無く圧巻の一言です。
ただ、人が多すぎてゆっくり見られないのが残念なところです。

★日本と違う職の概念
ドイツの工場労働者を見て「日本人とは仕事に対する考え方が違うのかな?」と感じたのは、そもそも学校を卒業して(あるいは在籍中)から、職業訓練を経て職に就くまでの「就職制度」の違いからなのかなと思います。
ドイツでは専門的なスキルを身につけて職に挑むのが一般的です。
これに深く関わってくるのがいわゆる「マイスター制度」ですが、そういった制度そのものが日本には無いので、通訳の方の話を聞いてもあまりピンときませんでした。
わかりやすく解説しますと、職に就くには専門的なスキル、そして資格が必要となってくるわけですが、これは日本の就職活動とはまったく制度が違います。
日本で言う中学生くらいから、すでに自身の進むべき道を決めて専門学校、または各企業で実際に働いて(訓練)、専門の資格を取り、就職先を見つけるというものです。

誰でもテキトーな所で学んでテキトーなところに就職出来るのかと思いましたが、この制度は非常に厳しい仕組みになっているようで、30歳を超えても「無資格・見習い状態」という人も少なくないとのことです。

ちなみに国が公認する職種は356。
やはり人気・不人気があるそうで、もちろん男子に一番人気なのは・・さすが自動車の国、ズバリ「自動車整備士」だそうです。
長い年月をかけて訓練を積んでいくわけですから、大学生活の半ばあたりから「どこに就職しようかな~」なんてボチボチ考え始める日本の「就職活動」とは「重さ」が違うといっても過言ではありません。
制度だけでなく、法律も細かな取り決めがあるそうで、一言で「就活」といっても日本のそれとは制度も概念もまるで違います。
労働に対する価値観が違うと言いましたが、結果的に何年もかけて自分に合った職業を見つけるわけですから、彼らは自分の仕事に対して非常に誇りを持っています。

今回様々な企業で責任者の方々から色んな説明を聞きましたが、そういった彼らの「誇り」は言葉の節々に表れていました。

★もはやお手本の日本式生産システム
そのような「誇り」とは裏腹に、優れた生産システムが構築されているのかといえば、決してそうではないのがドイツ。
メルセデスの工場を案内していただいた際に、頭上の電光掲示板に【120】という数字が表示されており、その横に【3】という数字が表示されていました。
「あの数字はなんですか?」
との問いにすかさず責任者の方が
「【120】は今日の生産台数で、【3】という数字は検査で返ってきた台数だよHAHAHA」
という有様です。
それを聞いた我々、工業会ご一行のどなたかが「2、3%の不良て・・。こんなもん工程内で歯止めを利かさなあかんとこやろ~」とつぶやいたのが印象的でした。


工場のマネジメントという点においては日本のほうが進んでいるんだなと思います。
メルセデス工場案内の最中に、責任者の方が壁にかかっている札を指さして「あれはポーカーヨーカーの防止のためです」と言うシーンがありました。
【ポーカーヨーカー】とは・・はて、ドイツ語なのかな?と思い、それを訊いてみましたら、なんとビックリ、責任者の方が「あれ?ポーカーヨーカーは日本語じゃないのか?」と逆に驚かれる始末。
どう考えても横文字でしょそれ。と頭をひねっておりましたら、ご一行のお一人が、「あ!ポカヨケのことや!」と、ナイスフォロー。
ドイツ人相手に正しい「ポカヨケ」の発音を指導する爆笑な一コマがありました。
(ポカヨケも正当な日本語じゃないような気がしますが・・)
日本式の生産システムは遠く離れた自動車先進国のドイツにおいても、もはやお手本となるレベルにまで発展しているのかと感心した次第です。
他にも「KAIZEN」や「KANBAN」の文字も見受けられました。


 

 

 


★自動車とバイクのお話
自動車・バイクの話をしましょう。
ドイツの自動車年間新車販売台数は約320万台という規模です。(2013年の統計、商業車、トラック含む)


やはり自動車の国ドイツ、街でよく見かけるのは体感的にフォルクスワーゲン、オペル、メルセデス、アウディ、BMW、MINIと圧倒的にドイツ車が多いです。
もちろん欧州車であるルノー、プジョー、フィアットもよく見ます。



気になる日本車はというと、体感的に5%くらいかな~という感じでした。
たったそれだけかと思われるかもしれませんが、歴史や伝統を重視するヨーロッパにおいて極東の「後発メーカー」が作る自動車がそれだけ走っているということ自体がすごいと思います。


めちゃくちゃ見た!というわけではありませんが、日本車の中でもそれなりの台数を目撃したという意味で挙げられるのはマツダのロードスター。
2シーターライトウェイトオープンの開拓者としてやはり評価は高いようです。

東欧の低価格カー【ダチア】も何台か見ました。
さすがにタタや中国カーは見ませんでしたが、ヒュンダイは3台ほど見ました。


ドイツでは教習所というものがありますが、日本の教習所のように校内に道路というものはなく、実技はもっぱら公道になります。
日本でいう高速道路教習はもちろんドイツ名物アウトバーンを使い行うわけですが、周りの車がビュンビュンスピードを出すなか、教習車のノロノロ運転は見ていてなかなか危ういものがありました。
ちなみにドイツは18歳で成人扱いになりますが、自動車の免許取得は17歳から可能だそうです。


続いてバイク。
世界的に有名な一流自動車メーカーが出揃うドイツですが、実はバイクのメーカーはほとんどなく、ドイツで現存するバイクメーカーは皆さんご存知【BMW】と、ミニバイクを細々と作っている【ザックス】という会社のみです。
ドイツにおけるバイクの扱いは途上国で見るような「アシ」扱いではなく完全に趣味の領域です。
日本以上にそう感じたのは、原付や小型バイクがほとんど走っておらず、見るのはもっぱら中型以上のバイクばかりだという点です。
ライダーの装備もかなりガチガチな人が多く、そのあたりを考えますと日本以上に気軽に乗る乗り物ではないのかなという印象を受けました。

さて、写真で見るドイツのバイク。





 

 

 

 


多いのはやはり日本車。
CB1300、Ⅴスター、バルカン1500、CBR600RR、ニンジャ250、SR500等々・・
写真を取り損ねたのですが、私の愛車と同じCB750FOURも対向車線で目撃しました。カワサキの旧車数台と走っていました。
日本旧車のマーケットがどのようなかたちで存在するかは不明ですが、何台か見た個体はどれもピカピカな状態のものばかりでしたので、旧車エンスーは確実に存在し、保全、評価する文化はおそらく日本と同等かそれ以上だと思います。

ハーレーダビッドソンもかなり走っておりました。


で、ここになって言うのもなんですが、ドイツ国内で一番多く走っているバイクのメーカーはBMWなのです。
せっかくですからBMWモトアラートのお話もしておきましょう。
BMW製バイクの世界シェアは2013年現在13.9%とのこと。(日本で言うどの区分《排気量》から~というのは不明です)
さらに言うとBMWのバイクがトップシェアを占めている国は2014年現在、世界で16ヶ国あるそうです。(以上、BMWのデータは視察の際の概要から)

BMWのバイクは1969年から現在まで、今回訪問したベルリン工場で一貫生産されています。
(南米やタイでは一部現地生産(組み立て?)しているものもあるそうです)
ベルリン工場で生産している車種は全部で23車種。
興味深かったのは、完全受注生産という性質上、車体はもちろんエンジンやコンロッドに至るまで、実はすでにオーナーが決まっているという点です。
(日本のディーラーに並んでいるバイクは日本法人が「発注」しているのかな?)


もしBMWバイクのオーナーでしたらやはりあのようなシーンを見ますと、より一層愛情が深まるというものです。
機会があれば是非行ってみてください!

一部、キムコ(台湾)からエンジン部品の供給を受けているとの話がありましたが、どの部品のことなのかはわかりませんでした。


★自動車文化の違い
ドイツと日本を比較した時、決定的に違うと感じるのは「人と乗り物の共存」という概念です。


例えば自転車。
ドイツの歩道は人が歩くレーン以外に、半分ほど赤く塗られたゾーンがあります。
これは自転車が走る場所です。
日本では一部このような取り組みをしている地域もあるようですが、ほとんどないに等しいです。
だから未だに自転車は歩道を走るのが正しいか、車道を走るのが正しいかという問答を戦後から今に至るまで延々とやっている有様です。
歩道を走るな、車道を走るな、そう言われる自転車は轍だらけの危険なレーンを走らざるを得ません。
そして、その自転車が赤信号を無視して車に撥ねられようものなら、たちまち非のない自動車が悪者になってしまいます。


法治国家としてはあり得ない展開ですが、今の日本ではこれが当たり前です。
なぜなら我々の運転免許というものはその言葉から分かるとおり、「免じてもらい許しを得ている」というスタンスだからです。
つまり車を運転するすべての日本人は世間様に頭を下げながら日々、車を運転しているわけです。
車を運転することはすなわち悪いこと。
そしてそのような考えが根底にあるわけですから、自動車に対して世間の目は厳しいです。
弱者に対する過剰な保護制度、警察の無意味な取り締まり、重税かつ難解な納税システム・・。
これらの点を踏まえるに、日本は少なくともドイツと比べて明らかな交通後進国と言わざるを得ません。

物質的、技術的な部分がいくら発展しても、文化的な部分が育たなければ自動車産業の未来は決して明るくはならないでしょう。

★ドイツ車は本当にボッタクリなのか
日本に入ってくる輸入車(欧州車)は、ブランド力が乏しいアジアメーカーを除いて、どれも本国価格に比べて圧倒的に販売価格が高いです。
「輸入関税がかかっているからだ」という意見を聞きますが、これはまったくのデタラメで日本に入ってくる輸入車のすべてが「関税0円」です。
輸入車の販売価格に関税は1円たりともかかっていません。(二輪も同じです)
では輸入車は日本人相手にボッタくっているのかといえば、半分正解のようで半分間違いでもあります。
同じメルセデスのCクラスを見たとき、日本では現地価格より100万円以上高い価格で販売されている場合があります。
これは単に日本市場で販売するには「高級」である必要があるため、人によっては必要の無いオプション(本皮シート、ナビ、エコ機能やサンルーフやキセノンライト他色々)をてんこ盛りつけているからです。
本国で同じような仕様にした場合、結局日本販売価格と2、30万円も変わらないというパターンは結構あります。
本国では簡素な「素グレード」がありますので、そういうのと日本仕様を比較してはお話になりません。
(メルセデスだけでなく、あきらかにボッタな外車は確かにありますが・・)


★ゲルマンの愛国精神
私が今回、メルセデスを訪問するにあたって最も訊きたかったのはまさに車体価格のことなんですが、先ほどのような下衆な「オプションの有無」の話ではなく、ズバリこれです。

【ヨーロッパでメルセデスの価格が最も高いのは実はドイツと聞いたがそれは本当か?また、ドイツ人はその事実を知っても特に怒ることはない、なぜなら自国の製品を愛しているからだと聞くがそれも本当か?】

価格が高くても純粋な愛国精神に基づき自国の車を選ぶ・・!なんという素晴らしき国民性でしょうか。
本当にそのような愛国心がドイツ人にはあるのか。純粋にそれが聞きたい!
さて、通訳の人を介して上記の内容をそのまま責任者の方に訊いたのですが、その答えは少しこちらの意図とズレており、明確な答えは得られないままでした。

一応、いただいた答えを書いておきますと
「価格が高くても買ってもらえるのは、我々がその価格に見合ったモノを作っているということであるし、そういう評価をしてくれているということです。我々は自分の作ったものに絶対的な自信があるし、これからもそれは変わらないということが言えます」
とのことです。
うーん、言わんとしていることは十分にわかったのですが・・。



ただ、他のヨーロッパ諸国より価格が高いということに関してはまったく否定しなかったです。
あと、価格が高くてもドイツ人が自国の自動車を支持しているということは確信が持てました。
どうしても引っかかるのは、ドイツ国外でのメルセデス販売価格がドイツ本国より安いということ。
こんなことあり得るんでしょうか。
またドイツ国民は本当にそんなこと納得しているんでしょうか。

ここからはあくまで私の仮説です。
まず、先に述べました、国ごとに異なる仕様の違いがあるのではないかという点です。
同じクラスの車種でもドイツ仕様とその他の現地仕様では装備に差があるため表面的には同じ車種でも価格差があるように見えるのではないかということです。


もう一点は生産国の違いによる人件費の差。(=品質の差)
ドイツ仕様はそのほとんどがドイツ国内生産により製造・組み立てが行われているのではないかという点です。
調べてみましたら、ダイムラーの有する生産拠点はドイツ以外にも
・フランス
・スペイン
・ポルトガル
・フィンランド
・トルコ
・ロシア
・チェコ
・ハンガリー
・オーストリア
と、ヨーロッパ諸国だけでもこれだけありますので、ドイツ国外仕様においては、例えば労働集約型の部品、あるいは車体の組み立て自体をそれら人件費の安い国で行っているからという可能性があります。
※ただし、上記生産拠点はダイムラー社全体が有する生産拠点ですので「スマート」「フレイトライナー」「ウニモグ」等のブランドも含まれております。どの国の工場で「メルセデス・ベンツ」ブランドが生産されているのかまではわかりませんでした。
兎にも角にもドイツ人がドイツ製品を愛しているのだということは十分わかりました。
徹底的な合理的主義のアメリカでは自国のブランドがブッつぶれようが、お構いなしに「良いと思うモノ」を選びますから・・。


さて、ドイツ企業視察レポートはこれにて終了です。
今回の訪問でドイツの何がわかったのかと言われれば、一度だけの視察では何も見えていないような気がするのが正直な感想です。
自動車に関して言えば、やはりドイツのほうが自動車共存歴が遥かに長いゆえ、技術・文化面においての成熟度に関してはまだまだ見習う部分があるなと思いました。


今回すべての企業で耳にした言葉、それは「伝統」「歴史」です。
最新の設備で最先端のモノを作るのが彼らの目指すところではなく、あくまで「いかにして熟成させるか」が彼らのアイデンティティーだと気づきました。
物質だけでは決して計れない優れた「精神性」がドイツのものづくりの原点なんだと感じた次第です。


ベルリンの壁にて。


次回は9月15日から1週間行って来ました【アメリカ日系企業視察記】です。
気長にお待ちください。


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