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2015.03.17

太陽と埃の国で 後編 (フィリピン日系企業視察の旅 2)

 さて、お待たせしましたフィリピン日系企業視察の旅 後編です。


本編は車とバイクのことについて書いていきます。

(各データソースは今回訪問させていただいた企業様の資料やマークラインズからの引用です)


まずは自動車。
フィリピンの2014年度の新車販売台数は約27万台と、過去最高を記録しました。
ここ10年・・例えば2005年からの新車販売台数を見ても毎年右肩上がりの推移できており、鈍化の兆しが見えるタイやインドネシアと比べても、この勢いはまだまだ衰える気配はなさそうです。
2010年の16万台が2011年に14万台に一時減少したのは、この年に業界3位のヒュンダイ自動車がCAMPI(フィリピン自動車工業会)を脱退したため、その台数がデータからゴッソリ抜けてしまったからです。
(なぜ脱退したのかは不明ですが、何か販売台数を公表したくない理由があるのは確かです)

フィリピンでの自動車メーカーのシェアを見てみましょう。
第1位・・・トヨタ   38.4%
第2位・・・三菱    18.6%
第3位・・・ヒュンダイ  8.6%
4位はフォードとホンダが6%を行ったり来たり・・といった感じです。


1位のトヨタは予想どおりですが、2位に三菱がつけているのは日本人ならだれもがビックリする驚愕の新事実です。(失礼)


確かに三菱車の車はかなり多いなと思いました。
国籍別シェアでいいますと、日本メーカーが8割を超える圧倒的な勢いを見せつけています。

ここからはひたすらフィリピンを駆る自動車の写真を貼り付けていきましょう。


















フィリピンで人気のタイプはやはりSUVやピックアップ車。
タイと同じような光景だったなと思います。
フィリピンでの人気SUVの筆頭はトヨタ【フォーチュナー】と、三菱の【モンテロスポーツ】、フォード【エベレスト】。
本当にどこにでも走っています。
アメリカ市場専用車のフルサイズピックアップ車も何台かみかけました。
マルコス独裁時代には一時トヨタが撤退して、町中の自動車の殆んどが三菱と日産だけという時代もあったそうです。
三菱は今でもシェアをキープしていますが、今回の視察では日産車はあまり見かけませんでした。

せっかくですから今回お伺いさせていただきました自動車メーカー様(トヨタ様、いすゞ様)のフィリピン市場での展開をザクッと紹介していきましょう。


●トヨタ
フィリピンではサンタ・ロサ工場に1拠点。
フィリピンでの生産車種は【ヴィオス】と【イノーバ】の2車種のみ。
どちらもアジア市場戦略車なので日本では見ないです。

ヴィオス(コンパクトカー)
ヴィッツがベースになっています。
世界共通認識として、その国の中間層がこのような1500cc前後のコンパクトカーを買っていく傾向が強くなってくると「モータリゼーションの到来」と言われます。

イノーバ(ミニバン)
なんとラダーフレームです。
普通乗用車に大人4人乗りとかが当たり前の国では、このような大きな室内空間の車は重宝されます。

フィリピンで作っているのがこの2車種だからといって、ディーラーで売っているのがこの2車種だけと言う意味ではありません。
フィリピンのトヨタディーターで販売している車種は他にも【ランドクルーザー】、【フォーチュナー】、【ハイラックス】、【カムリ】、【FJクルーザー】、【アルファード】などがあります。
意外にも【86】や【プリウス】も正規取り扱いです。

●いすゞ
いすゞは日本での乗用車市場からは完全に撤退しており、職業トラックのパッとしないイメージしかありませんが、アジア圏では今なお根強い人気を誇ります。
1950年にはタイへの輸出が始まったということですが、同じ頃にはすでにフィリピンでもいすゞ車は走っていたとのこと。
以前行ったタイでもいすゞのピックアップ車が相当数走っていたとお伝えしましたが、東南アジアにおけるいすゞブランドの認知度は日本のそれとは比べ物になりません。
フィリピンでも例外なく、いすゞ人気はかなりのものです。
ローマ法王が今年1月にフィリピンに訪問した際に、ミサなどの移動の際に使用したのがいすゞの【D-MAX】だったというのですから信頼度は政府お墨付きというわけです。

フィリピンで走っている小型中型トラックの市場ではおよそ7割がいすゞのトラックといわれています。
なんでも、いすゞのトラックに限定していえば、日本で10万キロ・20万キロ走った個体をバラバラにしてフィリピン国内へ輸入、左ハンドルに改造して売っている専門の業者がいるほどです。
たしかにどこに行ってもいすゞのトラックが多いのなんの。
フィリピンの荒い舗装路で毎日酷使しても壊れる箇所が少ないようで、現地でも大変評判なようです。

乗り合いバス「ジプニー」のエンジンもいすゞのエンジンです。
乗用車のSUV部門ではトヨタと三菱の後塵を拝しておりますが、2014年に発売した【MU-X】でシェアの奪還を狙っているとのことで、今年はさらなるイメージ戦略のために広告宣伝費に資金を投入していくと意気込んでおられました。

続いてバイクです。
以前に行ったベトナムに比べて、フィリピンではバイクの台数は少ないと感じました。
詳細をみていきましょう。
フィリピンの二輪新車の販売台数は世界で8位。
114万台市場です。
1位はインドで1,434万台、続いて中国1,163万台、インドネシア774万台、ベトナム276万台となります。
平均所得がフィリピンの半分、しかも1,000万人も人口が少ないベトナムのほうが市場規模が2倍だというのはなかなか興味深いですね。

ベトナムは公共交通機関(路線バスや電車)のインフラがかなり脆弱で、庶民の移動手段はバイクに頼らざるを得ないというのが実情ですが、フィリピンは電車以外にも、トライシクルやジプニーなどさまざまな移動手段があるため、そこまでバイクを必要としないということがその理由です。

人口と国内登録台数から計算すると、フィリピン人の20人に一人がバイクを持っているということになります。
では、今回お世話になりましたヤマハ様のフィリピンでの現状をお伝えします。


●ヤマハモーターフィリピン
フィリピンでのヤマハバイクのシェアは約15万台・19%で業界2位。
実はカワサキも同じようなシェア争いをしており、お互い2位を行ったり来たりしているのが現状です。
3年前まではカワサキのシェアがヤマハを大きく引き離していたことを考えると、ここ数年のヤマハの健闘ぶりがうかがえます。
1位のホンダは約35万台と圧倒的な強さを見せつけております。
4位のスズキは10万台と、これもなかなか際どい線まで迫ってきております。
他に現地で見たのは台湾のキムコやSYM。
これら日本外のメーカーが約2万台のシェアを持っています。
一応、市場規模が114万台とお伝えしましたが、その中には無名の中国バイク群が約3割を占めているとの報告もあります。
これらは地方の零細メーカーですので無論「ザコ扱い」です。
シェア争いには含めておりません。


ベトナムと同じくなんとフィリピンにもコピーバイクが存在するらしいです。
ホンダだけでなくヤマハも。
コピーバイクはやはりあっけなく壊れるそうですが、いかんせん忠実にコピーされている個体もあるそうで、そのようなバイクにはなんとヤマハ純正パーツがそんまま取り付けられます。
壊れたバイクにヤマハの純正部品を取り付けていくうちに、いつの間にか純正の性能に近づいてくるという都市伝説もあるくらいです。
さすが世界のヤマハ。


ヤマハモーターフィリピンでの車種展開は現在15車種。
大半が現地生産モデルですが、一部タイやインドネシアからの輸入モデルもあります。
今のところ正規ラインナップの中で唯一日本製のフラッグシップモデルの250ccが1台あるのですが、何の車種かおわかりになりますか?
答えは【XT250】。

日本名【セロー】です。
日本でも30年以上、モデルチェンジを繰り返しながら売れ続けているロングセラーバイクです。
(実はカワサキのDトラッカーがタイ製だから同クラスのセローもタイ製だとばかり思ってました。スミマセン。)

ちなみにフィリピンで10年連続で年間売り上げ1位の人気車種はホンダ【XRM125】。
【フィリピン版カブ】とも言われている、泣く子も黙る名車中の名車です。(多分)

フィリピン人はバイクにしろ自動車にしろ、外装や電装をカスタムするのが割りと好きな人種のようで、ローカルのアフターパーツメーカーは多数存在するとのことです。
たしかに、爆音マフラーのスポコンカーや、テールランプが緑に光るイカツいカスタムを施したオフロードバイクなど、カスタム志向がそこかしこに見受けられました。
日本のアフターパーツのメーカーさんは積極的に進出するべきでしょう!
ただ、タイほどの市場規模に育つにはあと10年はかかるとは思いますが・・。

(↑サンタロサのホテルに止まっていた謎のJDMカー)
以上、フィリピンの自動車、バイク事情でした。

さて、フィリピン日系企業視察の旅いかがだったでしょうか。
フィリピンという国をざっくり見ていきますと、国民は非常に勤勉で上昇志向があり、
またグローバル感覚が他の東南アジアの国に比べても高いなと個人的には感じました。
人口構成も非常に秀逸ですし、質の高い労働力と言う意味ではあと2、30年間は何の心配も無いように思います。


やはり問題点として最初に思い浮かぶのは治安。
安全面に難があるというのは、それはすなわち経済発展の阻害要因だと言えます。
それと行政機能が貧弱という点。
長期的なプロジェクトは途中で頓挫する場合が多く、これが今回私が思った「道路や空港などの基本インフラがボロい」というところに集約されるのだと思います。


そして、最大の問題点は「もっと自分の国を良くしたい」という信念が薄いのではないかという点。
上昇志向があり、グローバル感覚も備わっていると書きましたが、スキルを高めた優秀な人材が海外に出たままフィリピンに帰ってこないのであれば、それはそれで大問題です。
フィリピンが経済的に他の周辺国から大きく出遅れてしまったのも、グローバル感覚が秀でていながら、優秀な人材が海外に出て行き、国内の状況が何も変わらなかったためとも言われています。
外で学んだことは必ず祖国のために還元してほしいです。
外から祖国を支えるのではなく、内から祖国を築いていく、そのような国になってほしいなと思います。
内から巨大な支柱を築くことが出来た時、アジアの落ちこぼれと呼ばれた国は、国旗に描かれた太陽のようにアジアの光になるのだと私は思います。


フィリピンに栄光あれ。

三洋金属熱錬工業㈱の折田さん(右)と。
以上、フィリピン日系企業視察の旅でした。


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