会長&スタッフブログ
2017.12.24
中国大連見聞録
皆さんお久しぶりです。イッセイです。
さて、11月19日~22日の3日だけですが、中国の大連に行って参りました。
伊藤製作所の伊藤社長にお誘いいただき、現地に進出されている藤本産業株式会社様にお邪魔してきました。
そこから同社の藤本専務に案内いただき、伊藤社長と私の3人で大連のローカルネジ工場を訪問させていただきました。
よく考えると中国は上海と香港には行ったことあるのですが、ガチンコの中国本土は初めてです。
朝から晩まで動いたのは丸一日だけでしたが、とりあえず目にしてきたことを色々とレポートしていきます。
時差は日本と-1時間です。
中華人民共和国。
人口は13億7000万人というモンスター国家です。
日本の10倍の人口です。シャレにならない多さです。
てか、大連ってどこ?
はい、大連を正確に記しますと「中華人民共和国 遼寧省 大連(りょうねいしょう だいれん)」になります。
遼寧省は北朝鮮の西に位置します。
だいたい大連だけで700万人くらい人がいるそうです。
大阪府が880万人ですからほとんどそれに匹敵する人口ですね。
(ちなみに遼寧省全体では4300万人)
北朝鮮の隣ということでこの時期はベラボウに寒いときいていましたが、そこまで極寒というほどではなかったです。
それでも朝方の気温は1°くらいまで下がっていました。
大連は元々戦時中に日本が統治し、工業・貿易都市として発展させるために道路や鉄道などのインフラを整えました。
そして海に面しているため港もその時整備されました。
経済都市としての下地は戦時中にすでに出来上がっていたということですね。
1984年には大連経済技術開発区がされ、ここに外国企業を積極的に誘致しました。
やはり一番多いのが日系企業で全部で2000社の外国企業が進出しているそうですが、うち日系企業が500社超で1位とのことです。
この経済特区には工場以外にも商業施設や生活区などが設けられており、30万人の人口を有する巨大コミュニティーとなっています。
ちなみに大連に駐在する日本人は約2000人だそうです。
そういった歴史的な背景もあってか、大連における対日感情は非常に良好だと言えます。
そして貿易によって異文化交流がそれなりのレベルであったのでしょう、大連中心部には農村部丸出しの光景は全くなく、非常に洗練された印象があったのは事実です。
それでも香港や上海の大都市に比べれば、発展レベルは少し出遅れている感も否めません。
●街の車、交通マナー
大連の中心部は道路も綺麗で、ゴミもまったく落ちていませんでした。
もはや日本と同じような「車社会」といっても過言ではありません。
そしてたくさんの自動車が走っていました。
人気なのはやはりフォルクスワーゲンですね。
それでもトヨタ(レクサス)やホンダ(アキュラ)もかなりの台数が走っていました。
メルセデスやBMWも人気があるようです。
ローカルのブランドでしょうか、見たことのないエンブレムの車もたくさん見ました。
意外なことにヒュンダイやキアなど韓国ブランドの自動車はほとんど走っていませんでした。
中国人はメンツとプライドの塊です。
自動車はその最たる例ともいえます。
ある程度名の通ったブランドでないと納得がいかないのだと思います。
いわゆる「車格」ですね。
だから少しでも小金持ちになるとさっさと上級ブランドに「はしる」のだそうです。
ボディタイプの傾向としてはほぼセダンとSUVで占められています。
コンパクトカーもある程度走っていますが、やはり主流はセダンのようです。
ワンボックスカーやピックアップトラックはほとんど見ませんでした。
大連の道路は日本と同じような小綺麗な車で占められているのかと思いきや、下町の工場にいく道中には前時代的なボロボロのオート三輪も走っていました。
交通マナーはどうかと言いますと・・インドやベトナムのような強烈な国を見てきましたからまだマシにも思えますが、やはりまだまだ発展途上と言わざるを得ません。
というか、滞在3日間で事故を5回も目撃しました。
うち1回は渋滞を作って、道の真ん中でドライバー同士が車から降りて罵り合っている有様です。
基本的に道路の上はチキンレースの会場です。
車線の合流があろうものなら隣の車線にいる相手がスピードを緩めるまで、おかまいなしに突っ込んで行きます。
われ先にと全員がこの調子ですから、接触事故もそこらで頻発します。
「どっちかが譲ればさっさと行けるのに・・」
と思ってしまうようなシーンは度々ありました。
日本やヨーロッパ並の交通マナーに達するにはあと20年はかかると思います。
ちなみに大気汚染が心配されましたが、大連の空はとても青かったです。
なんでも今年に入って政府が環境対策に乗り出して、大気汚染の原因となる工場に指導をしたらしいのです。
おかげで空は綺麗になりましたが、これのあおりをモロに受けたのが工場排水の代名詞でもあるメッキ業。
町にあった小回りの利く便利な弱小メッキ屋はバタバタと倒産したそうです。
●現地のゴハン
大連でのゴハンは昼も夜も藤本専務に色々と連れて行っていただきました。
大連には日本人が多いので、日本人向けのレストランや居酒屋がたくさんあります。
1日目の夜は居酒屋、2日目の夜は焼肉屋に連れて行っていただきましたが、どちらも普通においしかったです。
いや、完全に日本のお店と変わりません。
味はもちろん、メニューやお店の雰囲気まで日本と大差なしです。
ちょっと違う点といえばスタッフの日本語がカタコトなくらいです。笑
2日目のお昼には街の大連料理屋に連れて行っていただきました。
地元の一般人ではなかなか来ることが出来ないようなハイレベルなお店です。
基本的に量が多すぎます。
あと味がコテコテの油モンが多いです。
港の街ですから素材自体は魚料理が中心です。
「なんやねんこの魚類は・・」みたいな得体の知れない魚でも、食べてみるとなかなか美味な物があります。
でも一番おいしかったのは豚骨と漢方を煮込んだ謎の薬膳ホットスープでした。
(5杯くらいいきました笑)
●大連の町工場
今回訪問させていただいたのは地元資本の町工場です。
従業員が100人くらいいる優良な加工会社A社と、従業員10人ほどのローカルネジ会社B社です。
この2社は本当に対照的な工場でした。
まず、2日目午前からA社の訪問。
A社はNC旋盤やワイヤーカット、マシニングなどの工作機器を50台ほど所有しているそこそこ大きな会社でした。
概要を聞いていますと、もともとは日系企業だったようです。
工場をそのまま買い取ったのか、乗っ取ったのかは不明。
プレスをはじめ、加工や溶接などひととおりの設備は揃っていました。
ミツトヨの3次元測定器(多分2000万くらいするやつ)もあったので、モノによってはかなりの精度を要求されるのだと思います。
驚いたのは日系企業が行っていた工程管理や5S活動をそのまま引き継いで実行している点でした。
正直、我が社の5Sよりも数段先を行っているような感じに見えました。
ただ、現場の従業員はもれなく覇気のない顔をしていました。
ソフトの面は見えない部分も多々ありましたが、ハード面ではなかなか侮れないレベルです。
A社を出て1時間ほど移動し、午後はB社のネジ工場見学。
ここは昭和40年代の町工場かと思うほどの貧相な工場です。
基本は家族経営で、他に従業員が6、7人といった感じです。
工場の中に犬や猫が放し飼いにされている公私混同っぷりがいかにも中国ローカル工場といった感じです。
旋盤やフライスが6、7台ありました。。
社長のオヤジは我々に「ハード●ックナットのバッタもんを現在開発中」と言ってどっかで見たことがあるような、ないようなナットを見せてきました。
「コレ特許に引っかかるんじゃ・・」
と思ったんですが
「ウチのは構造が違うアルネ。ハード●ックナットの4倍の緩み耐性アルネ」
とか言ってました。
一同「ホ・・ホンマかいや」とツッコまざるを得ませんでした。
藤本専務のお話で興味深かったのは、現地のものづくりに「慣れた」日本企業は力の抜きどころが分かってくると中国製部品を使う部分を増やしていくのに対して、逆に中国の企業であってもよりよい品質を目指したいとの思いが強い会社では日本製部品を指定するという逆転現象が起こってくるのだそうです。
軽量化や精密さでしょうか。
どういう製品のことかは私の勝手な想像ですが・・例えば今日ほとんどの世界シェアを中国が握っている分野でいえば、パソコンやドローンなのかなと思ったりします。
小さな部品や精度が必要な部品はやっぱり日本製なのかな??
●中国人ワーカーの給料事情
大連の中堅ローカルメーカーの現場ワーカーの月給は5万円程度。
日本語が喋ることが出来る従業員だともうワンランク上の仕事に就くことが出来ますので、その場合で約8万円くらいだそうです。
ただ、中国の場合は人口が多すぎるのと、大都市と農村部では稼ぎの差が倍以上もザラ。
あくまで一例としてお考えいただければ幸いです。
中国人従業員との賃金交渉はすさまじい気迫だと聞きます。
1円でも多く給料が欲しいので、自分の能力を過大評価で伝えてきます。
そして「給料の額」がイコール「自分の能力」だというストレートな考え方なので、なぜもっと貰えないのかしつこく「根拠」を聞いてくる有様です。
もっとも面倒くさいのは、中国人は自分の給料の額をプライバシーだとは全く思ってないので、給料の上がった・下がったをベラベラと同僚に伝えることです。
この給料漫談は1日でその会社全体に広がるので、オレはどうなんだ!私も私も!と、結構な人数が一気に交渉にくるのだそうです。
藤本専務も中国での事業展開で給料交渉が最もしんどい部分だとおっしゃってました。
近い将来、優秀なAIさんに杓子定規で給料を算出してもらえるようになれば、中国人ワーカーを黙らせる有効な手段になるのではと思う次第です。
●感想
今回大連で目の当たりにしたものづくりのリアルな現場は予想以上のものだったというのが素直な感想です。
こりゃ日本企業もちょっとでも気を抜いたらその瞬間に追い抜かれまっせ~と本当にそう思いました。
近年、中国の企業も模倣や後追いではなく、真に自分たちの作るモノで世界を牽引しようという自我が芽生えてきました。
実際にそのような技術や知識はあるのかは別にして、彼らのバイタリティーは本物です。
脅威を感じるレベルです。
それと同時に、とにかく作れば売れるという場当たり的な「ノリ」はうらやましくもあります。
ちょうど高度経済成長の頃の日本と同じなんですね。
とにかく前に進めばなんとかなるという勢いが今の日本の製造業にはない中国の姿なのです。
10年後の中国はどのような発展を遂げているか・・まったく予測できません。
日本にとっては「友好」となるか「脅威」となるか。
そのあたりは中国の「自覚」次第だと思います。
今後もこの大国の動向を我々は良い意味・悪い意味の両面から深く注視していく必要があると感じました。
以上、中国大連レポートでした!
イッセイ