会長&スタッフブログ
2015.02.09
太陽と埃の国で 前編 (フィリピン日系企業視察の旅 1)
さて、皆さんお久しぶりです。
今回は2/3~2/7まで大阪府工業協会企画【フィリピン日系企業視察】に行ってまいりました。
お伺いさせていただきましたのは
・ジェトロ マニラ事務所 様
マニラ中心部
・トヨタ自動車㈱ 様
・㈱エフテック 様
・いすゞ自動車㈱ 様
・双葉電子工業㈱ 様
・三菱電機㈱ 様
以上、ラグナテクノパーク工業団地
・㈱創美工芸 様
・ヤマハ発動機㈱ 様
以上、リマ工業団地
以上の企業様でございます。
一応、地図を貼っておきます。
今回私は人生初のフィリピン上陸でした。
実は意外なことに1960年代のフィリピン経済の好調っぷりは東南アジアのなかでも突出していたようでして、アジア全体で見ても国民所得は第2位、その上にいるのは日本だけだったということです。
しかし、独裁政治による経済の停滞によって10年後には台湾、韓国に抜かれて、さらに10年後にはタイやマレーシアにも抜かれて、さらに10年後には中国にも抜かれ、現在に至るわけです。
およそ30年の間に繁栄と没落を経験しています。
現在のフィリピン人が最も懐かしむのはこの1960年代の繁栄期だといいます。
しかし、ここ数年のフィリピンの勢いがすごいというのもまた事実。
今回、フィリピンのありのままの姿を見てきましたので、それをお伝えしたいと思います。
フィリピンの再興は目前なのか・・!
いざ、マニラへ!
時差は日本より-1時間です。
●フィリピン共和国
人口は約1億人。
国土面積は日本の約80%。
なんと7,109の島から構成されています。
人種構成はマレー系が95%、中国系が1.5%、他・・です。
発つ直前にはイスラムのテロ集団が話題をさらっていたこともあり、「イスラム信者には十分気をつけるように」と念押しされましたが、実はフィリピンはキリスト教圏です。
カトリックが約80%、イスラムは5%に過ぎません。
戦国時代に熱心なカトリックだった高山右近が最後に流されたのもマニラでしたね。
国語・公用語はフィリピン語(タガログ語)ですが、第二公用語として採用されているのは英語です。
後述しますが、フィリピン人は英語が得意です。
これが国際舞台で勝負する上でかなりのアドバンテージとなっています。
お金は【ペソ】。
2.5倍すれば日本円に換算できます。
100ペソ=約250円。
●生活水準
一人当たりのGDPは2,792ドルで、わかりやすく年収に言い換えると約30万円。
今回訪問させていただいた日系企業様のお話ですと、一般ワーカーの給料は1日最低賃金335ペソほどで、マニラ中心部のワーカーですと1日最低賃金454ペソとのことです。
日本円で1日800円~1, 000円くらいです。
1日平均900円としまして、これに残業代を足すと1ヶ月で約25,000円~30,000円くらいです。
年収で約30万円。
タイが約60万円、ベトナムが約15万円ですから、発展レベルはタイとベトナムの間くらいの国だと認識いただければと思います。
もちろん貧富の差は激しいので、一流企業の優秀な人材ですと日本人の平均給与より上という人間もいます。
GDP成長率は、リーマンショック直後の2009年には、1.1%という数字を出しましたが、翌年には7.6%という驚異的な数字をたたき出しており、乱高下が激しい経済情勢とも言えます。
2012年には6.8%、2013年には7.2%と現在では安定した成長率を維持しています。
●教育
フィリピンは非常に教育熱心な国であるといわれています。
識字率は96%というデータもあり、国民のほぼ全員が文字を読むことができます。
先にも述べましたが、フィリピン人は英語が得意です。
地元の大学を卒業したレベルの人間ですとほぼ間違いなくTOEICで800点が取れるレベルです。
おもしろいのは数学。
フィリピン人は数学が苦手。
どれくらい苦手なのかと言えば、TOEICで800点が取れるレベルの人間ですら、日本の小学4年の算数ドリルをやらせて30点くらいのレベルだそうです。
大学を出たレベルの人間でそれなのです。
電卓を駆使して苦労の末に出してきた数字に対して「いや、これは間違いだ」とその場で指摘すると、「え?本当だ!なんで日本人は電卓も使わないでいきなりこんな難解な計算できるんだ!」と、ビックリされることも日常茶飯事とのこと。
しかし、そんな簡単な計算も出来ないのかとフィリピン人をバカにすることは出来ません。
なぜなら英語の得意な彼らからすれば日本人をこう見ています。
「なぜ日本人は中学、高校と6年間も英語を勉強するのに簡単な挨拶すら出来ないんだ」と。
これには何も言い返すことが出来ません。
民族の、そして教育の違いで得意不得意があってもいいではありませんか、そう感じた次第です。
●豊富な労働資源
フィリピンのローカル言語はフィリピン語(タガログ語)ですが、第二の公用語については英語を採用していることもあってグローバルに活躍する人材がとても豊富です。
英語圏の企業がフィリピンにコールセンターを置く、いわゆる「BPO関連」のシェアはなんと世界第1位。
聞くところによると、インド英語よりフィリピン英語のほうが聞き取りやすいとのこと。
また、現在爆発的に伸びているオンライン英会話市場においても、その安価なコストから世界中で引く手あまたの状態です。
この好調なBPOビジネスがどこまでフィリピンの経済を牽引できるかは、今後も注目するべき点です。
フィリピンといえばなぜか出稼ぎのイメージがありますが、これは概ね外れてはいません。
フィリピンの海外労働者はフィリピン人口の1割である1,000万人が海外へ出稼ぎに行っているといい、この海外からの送金がGDPの1割にも達するとのデータがあります。
日本では考えられないフィリピンの特殊な就労問題が垣間見えます。
出稼ぎ先のトップはアメリカでシェア43%、日本は7位です。
フィリピンの市場が有望であるといわれる理由の一つに、人口の構成が挙げられます。
以下ジェトロでいただいた資料をそのまま貼り付けます。
ナイスなポピュレーションのダイアグラムです!
インド、中国をも含んだASEAN諸国の中でも、最も理想的な形になっているではありませんか。
一方で失業率は政府の統計によりますと7.1%という数字が出てきますが、実質には20%を超えているという説もあり(ジェトロでの概要説明から)、雇用の安定が今後の課題でもあります。
●フィリピン人の労働観
フィリピン人の仕事の考え方は日本人と似たようなところがあるというのは、今回様々な日系企業様で伺った「ナマの声」であります。
教えたことはやり遂げようと頑張るし、自分たちで決めたルールは守ろうとする。
ただ、高度なことに関しては応用が利かないということもあるようで・・まあ、この点はどこの途上国でもあるような話です。
自分が働いている企業にはある程度愛着というものがあるようで、例えば今の職場より多少給料が高いところから声がかかっても断るということもあるようです。
「今の何倍もの給料をもらえると言うのであれば躊躇なく他の会社に移るとは思いますが、そんな極端な話じゃない限りは、今の会社で頑張ろうとするのがフィリピン人です。お金重視の考え方ではなく、人間関係や仕事の内容を重視する傾向にあるのは日本人と感覚は近いです」
とは㈱創美工芸の岩城様のお言葉です。
前回行ったアメリカでは、労働事情を掘下げていくたびに
「この国で労働者にはなりたくないし、経営者にも絶対なりたくない」
という感想しか出てきませんでしたが、それに比べればフィリピンという土地は、人をマネジメントするという点においては非常にやりがいがある土地だなと感じました。
●治安問題
フィリピンという国を客観的に見た場合、やはり一番のネックになるのは【治安の問題】ではないでしょうか。
今回本当にビックリしたのはどの企業様に行っても銃を持ったセキュリティーが常駐していたという点です。
例を挙げますと㈱エフテック様。
従業員650名、敷地面積40,000㎡の中規模メーカーですが、入り口にいるセキュリティーの人数だけでも20人は超えていました。
他にも、滞在したマニラホテルの入り口では毎回手荷物のX線検査、ボディチェックが行われていました。
日本でいうサイゼリヤ規模の普通の日本食レストランでもセキュリティーが2人。
日本人が多いところだとか、あまりそういうことは関係なくローカルレストランにでも普通にいました。
それだけ犯罪が多いと言うことなのでしょうか。
そしてセキュリティーが連れている犬は誰もが麻薬探知犬だと思うのですが、実は火薬探知犬です。
爆発物の持込みをガードするため犬とは・・・なんという物騒な話でしょうか。
現地の駐在員の方のお話ですと、フィリピンの警察はあまり信用がないそうです。
極端な例ですが、日本人に因縁をつけて小銭をせびるとか・・そんな例が実際にあったそうです。
そういった「警官は信用ならん」という意識が普通なようで、自分の身は自分で守らねばというスタンスがここフィリピンでは常識なのです。
ちなみに日系企業が雇っているセキュリティーの一人当たりのコストは月7万円程度。
一般ワーカーの給料が月3万円台ですから、生半可な金額ではありません。
ましてこれに頭数が加算されていくわけですから、セキュリティーコストだけでも年間にかなりのお金がかかるのは言うまでもありません。
ここが他の東南アジアと比較してもかなり違う点ではないでしょうか。
●交通インフラ
今回、フィリピンの移動で常に思っていたのが「道が悪い」ということでした。
基本的にどこを走っても道路がガタガタです。
初日から最終日まで乗っていたのは日産ディーゼルの観光バスだったのですが(もちろん20年以上前のモデルと思われる)サスペンションが悪いのか、車体がボロいのか、「ダダダン!ダダダダダダン!ダダダダダダダダダダダ」と小刻みにバウンドする乗り心地は本当に最悪でした。
いつもならバスの中で製作するレポートも、今回はパソコンを開いて5分も画面を見てましたら頭が痛くなってくる有様です。
インド、ベトナムも、総じて道路はガタガタでしたが、これだけ気分が悪くなることは今までありませんでした。
今まさにモータリゼーションの黎明期が始まったわけですから、今こそ力を入れてせめて主要道路だけでも刷新したほうがよいのでは・・と思います。
これは道路だけでなく空港も同じような感じです。
今回使用したのはニノイ・アキノ国際空港。
マニラ郊外にある、いわゆるフィリピンの玄関口なわけですが、利便性が悪く、汚い、狭い、ボロいのオンパレードでした。
入国時にビックリしたのは、飛行機から降りてシャトルバスに乗ってターミナルの入り口で下りた瞬間からいきなり入国審査がはじまっていたシーンです。
おそらく入り口から5メートルも無いんじゃないでしょうか。
そんなデタラメな設計ですから、シャトルバスから降りてきた無邪気なフォーリン達は予告なしにいきなりおしくら饅頭に強制参加となるわけです。
また、帰りの空港では、搭乗手続きが終わったあとのゲート内は空港利用者数に対して売店やトイレの数が圧倒的に少ないです。
トイレに入るのに10分待ち、1個の肉まんを買うのに15分待ち~と、正直うんざりでした。
自分の番が回ってきたときに後ろを振り返れば、自分の待ってた時より行列が2倍くらいに増えている有様です。
トイレの話でいえば、ゲリが漏れそうになってから列に並び始めた人は確実にゲームオーバーです。
しかし、この空港内の売店で買った【SIOPAO】という肉まんはメチャクチャうまかったです。
それだけは褒めておきます。
さて、今回はここまでです。
次回後編は恒例の自動車・バイク市場全般について書きたいと思います。
気長にお待ちくださいまし。
ではでは~
イッセイ