会長&スタッフブログ
2013.02.28
イッセイ企業視察の旅 第二夜 上海編
ハイ、みなさんこんにちは。
今日は、前回ベトナム視察の3ヵ月後に行きました上海編です。
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【上海視察記】
2011.6.16 ~ 2011.6.19
さて、私は6/16~6/19の間、上海に行ってまいりました。
目的はなんぞや・・!
それはズバリ、中国上海にて『上海ファスナーエキスポ2011』というファスナー(締結部品全般)の見本市が開催されるからであります。
当社も割ピンを製造している立派な「マニュファクチャー」ですので見に行かない手はありません。
今や日本のネジ業界は安価な中国製、台湾製、インド製など、さまざまな新興国からの輸入品にメッタ打ちにされております。
割ピンに関してはどうか・・・。
とりあえずはご安心ください。
我が社の割ピンと、その他新興国生産の割ピンの品質の差は歴然です。
新興国の割ピンは、言ってしまえば【穴に入ればよい】レベルです。
当社の割ピンと比べて、どれほど品質の隔たりがあるのかと言いますと、例えば自社のホームページ上に平気で腹ぶくれの割ピンを掲載しているようなレベルです。(これはおそらく、キャリア巻きの半丸線をクセ直しをせずにそのまま成型しているからだと思います。)
「穴に入る割ピン」レベルならまだマシなほうで、箱を開けたらゴミが混入しているとか、「基本的に脚のネジレは自分で直して使うのが前提」など、あり得ない話を耳にしたこともあります。
ちなみに腹ぶくれ割ピンなど、当社では検査の段階で『不適合品』として廃棄するものです。
では、余裕綽々でかまえておればいいのかといえば、決してそうではありません。
ネジやボルトがそうであったように、途上国だと見下していた国がいつの日か日本製割ピンと同レベルの物を作って日本に乗り込んでくるかもしれません。
来たるべき日のために防衛線を張るべく現地を調査しておこうという、いわば敵地視察なのです。
私は平成の小野妹子となって煬帝(ようだい)に国書を叩きつける覚悟で行って参りました。
というわけで、いつも取引でお世話になっているIさんにいろいろと手続きをしていただきまして、無事、現地に到着。
2日目からいざ出陣!
ここがその会場。
1階は工作機械の展示です。
2階と3階がファスナーの展示会場になります。
さまざまなメーカーが出展しておりまして、中国以外にも、日本、台湾、韓国、タイなどさまざまな国の企業が自慢のネジやボルトを披露していました。
そしてお昼になると客がいてもおかまいなし。
なんと机で弁当を開けてその場でメシをほおばっております。
・・なんという国民性(笑)
3日目は現地の工場視察です。
猛烈な悪路を2時間ほど爆走。
つきました。
オフィスは新築のようで、まだピカピカです。
ド派手なオープンセレモニーになぜかワケもわからず参列するハメになり、日本のバブル時代を髣髴とさせるようなムダな演出にしばし唖然・・。
その後は、工場を見学させてもらいました。
そこで見たのは・・
想像してたよりも格段にレベルの高い設備・・!
だだっ広い敷地にボルトホーマーがこれでもかというくらい並んでおります。
思ってたよりも格段にデッかい設備に圧倒されました。
さて、ネジ関連の話は一旦置いといて、現地で見たこともここに綴っていきたいと思います。
実は15年ほど前にも一度、観光で上海を訪れたことがあります。
そのときの感想は、その1年前に行った香港より経済発展は10年は遅れてとるな・・と正直思いました。
しかし、成長著しい中国。
ここ上海も例外ではなく、高層ビルがかなり増えていました。
聞くところによると、現在、上海の人口は2200万人だそうですが、10年位前までは半分くらいだったとのこと。
短期間で人増えすぎでしょう・・。
それだけ、経済が発展したということでしょうか。
出稼ぎで一時的に住む人がドッと押し寄せているようです。
しかし、上海の戸籍関連の決まりごとは相当キビしいらしく、例えば、農村部に住んでいる人が上海に移り住むことは出来ないそうです。
都会で働く人は会社でノウハウを身に付けたらサッサと独立します。
そこからさらに成功すれば財を成すことが出来ます。
でも、農村部出身者はなかなか貧困のスパイラルから抜け出せません。
だから互いの格差は広がる一方なのです。
あと、都会的な高層ビルは多いですが、街そのものはどんよりと小汚いです。
舗装されているアスファルトもところどころ撓んでいるので、そこにはゴミがたまり、水溜りも出来ます。
そして、現地の人間は平気でそこらにゴミを捨てます。
特に多いのがタバコの吸殻。
中国で携帯灰皿を普及させたらノーベル平和賞モンだと思ったのは余計なお世話でしょうか。
つづいて自動車・バイクです。
まず自動車。
中国でのタクシーはフォルクスワーゲンの「サンタナ」が圧倒的に多いです。(てか、ほとんど全部)
タクシーだけではなく、一般人が乗る車もワーゲンがダントツで多いです。
フォルクスワーゲンは中国で国外の自動車メーカーとしては最初に合弁企業を設立したメーカーであり、そういう意味でも中国人にとってワーゲンは【国民車】みたいなものです。
インドにおけるマルチ・スズキみたいな感じかな?
自動車のシェアは体感的に
ドイツ車4:日本車2:中国車2:アメ車1:フランス車0.5:韓国車0.5
という感じでした。
見た感じ高級車として人気が高そうなのは、アウディ、ベンツ、レクサス、BMW・・だいたいこのあたりです。
遠く離れたUAEのドバイでは体感7割が日本車だったことを思うと、なんとも寂しい上海の日本車事情です。
ちなみに上海で車のナンバーを取得しようとすると、なんとその経費は・・中古車一台が買えるほどのお金を払わないといけないようです。
これにはビックリ!
しかも、農村部の車のナンバーでは上海に入ることが出来ないとか、にわかに信じがたい法律があるようです。
渋滞を未然に防ごうとする試みなんでしょうが・・いずれにしろ日本ではちょっと考えられないです。
続いてバイクです。
バイクといっても国がまだまだ発展途上なだけに、バイクを【趣味】として楽しむ余裕はないようです。
なのでバイクといえばスクーター。
スクーターといえば「足」です。
足扱いの汚いバイクが街には氾濫しておりましたが、人口に比べて台数自体はそこまで多くないように思いました。
なにせ、3月に行ったベトナム・ハノイはどこを見てもスクーターだらけでしたので、そっちのインパクトのほうが大きかったからでしょうか。
思ってたよりは少なかったです。
趣味としてのバイクは根付いていないと言いましたが、リッターバイクの存在自体は知っているようです。
おもちゃ屋にはホンダのCBRやスズキのGSX他、ドゥカティやハーレーのプラモデルが売られていました。
インドネシア出身(華僑)でネジの卸問屋を営む黄さんに
「バイクは何乗ってるんだ?」
と聞かれたので、
「ヤマハの1700cc。あとミドルクラスのカワサキとホンダ!」
と言ったら、目をむいてビックリしていました。
ちなみに黄さん曰く、インドネシアではそんな大きいバイクは登録できるかどうかわからないとのことです。
最後に、冒頭の上海ファスナーエキスポを視察して感じた事を。
正直な感想を言わせてもらいますと、ネジ関連の生産はもはや完全に新興国の【お家芸】になってしまったといってもいいでしょう。
人件費が格安というのは言うまでもなく、納期、品質においても日本と殆んど差がないレベルにまで達しています。
我々日本の町工場がネジ関連で生き残っていくには・・高精度、徹底した品質管理、短納期というのは必須条件です。
それとプラスアルファ【ブランド力】【高付加価値】という要素がなければ、新興国のネジに対抗するのは不可能でしょう。
もはや「作っていれば買ってくれる」という時代はここ日本においては過ぎてしまいました。
日本のネジ会社は今直面している荒波にどう向かっていくべきか・・各社が生き残りをかけてその方法を死に物狂いで模索しなければ順々に死んでいくだけの運命です。
幸い、我々日本のメーカーに求められているものはまだまだあります。
それは製品自体の質であったり、企業としての信頼性、業の緻密さであったりもします。
今回の上海視察を経験し、もう一度、原点に返って「日本らしいものづくりとはなんぞや」ということを真剣に考えなければならないと感じた次第であります。
以上、イッセイの上海見聞録でした。
イッセイ