さて、皆さんお久しぶりです。私です。
今回もいつもと同様、11月の上旬から約1週間、海外日系企業視察に行ってまいりました。
行き先はタイです。
あと、カンボジアにも寄ってきました。
木枯らし吹き荒れる11月初旬、寒い寒い~と言いながら日本を出たわけですが、さすが南国タイ。
結構暑かったです。
カンボジアはもっと暑うございました。
私自身タイ訪問は今回で2度目です。
初めて行ったのは2年前、洪水の真っ只中でした。
(前回のレポートはコチラ → http://www.hinomoto-metal.com/blog/?p=1104)
あとそれから・・・
スミマセン。
実はタイ最終日前日の夜なんですが、ものの見事にデジカメを落としてしまいまして・・
本視察のレポート用写真ですが、ほとんどありません(笑)
最終日の移動中に必死に撮った写真が何点かございますので、それを薄く浅く活用していく所存でございます。
活字ばっかりのレポートになってしまうかもしれませんが、最後まで読んでいただければ・・嬉しいかな。
タイで11月といえば乾季にあたるのですが・・・今回珍しく雨に打たれました。
さて、前回のレポートはタイで見た自動車やバイクのことを中心に町の風景や国民性のことについて書きましたが、今回はタイの自動車事情についてもう少し掘り下げた内容を書きたいと思います。
てか、ほとんどそれがメインなんですが・・。
投げ出さずにお付き合いいただければと思います。
さて、タイの街を見ますとまず気づくのが日本車の多さです。
これは2年前のブログでも書きましたが、タイの街には日本車が溢れています。
2年前に見た光景とほとんど変化は見られません。
タイでは『日本車』はもっとも人気のあるカテゴリーです。
街で見る車の実に8割方が日本車なのです。
(実際に2012年のタイ国内新車販売台数の内、日本車のシェアはなんと88.5%でした!)
タイと日本車の縁は割りと歴史があります。
日産を例に挙げますと、正式な輸出は戦後まもない昭和24年から行っていたようで、昭和35年にはタイの日産総代理店がタイ政府に許可を申請して、かの有名な【ブルーバード】のノックダウン生産を開始したとのことです。
前回行きましたタイ某所にある自動車パーツの宝庫に関しても70年代の日本車のパーツ等が大量にありましたが、あれはその当時、日本からの輸入車またはノックダウン用に日本から大量に送られてきたパーツが今に残っているからです。
タイでの絶大なる日本車人気の理由は、その当時からの信頼と実績が現在まで積み重なってきた証だと言えますね。(ドヤ顔)
そこに加えて車好きのタイ人気質が発揮されるわけですから、ヒュンダイ自動車やタタ自動車のような途上国が生産している「ゲタ用自家用車」がバンコク市街にはまったく走っていないわけです。
この点は、日本人として非常に嬉しく思うところです。
さて、バンコクの街中で走っている自動車の中で、特に多いのがピックアップ車両。
ピックアップタイプの車両は日本ではあまり馴染みがないですが、わかりやすく言えば【サニトラ】みたいな形の車です。
5台に1台がピックアップとは言いすぎですが、確実に10~15台に1台はピックアップだと言っても過言ではありません。
基本サイズは積載重量1tのタイプです。
一番人気はやはりトヨタの【ハイラックス】です。
その次に多いのが意外にも【D-MAX】といういすゞのピックアップです。
実はここタイではいすゞブランドは我々が思っている以上にメジャーなブランドで、とても人気があります。
他は日産や三菱やマツダ、フォード、シボレーなどのピックアップもチラホラ見かけました。
しかしなぜにそんなにピックアップ車両が多いのでしょうか。
それには理由があります。
まず水害が多いタイでは車高の高いピックアップ車両は非常に実用的だということです。
基本歴にバンコクの周囲50kmは一つの山もない平地です。
都市機能として水捌けの悪さはよく指摘されるとおりで、少しの大雨ですぐに川から水があふれ出します。
実は道路が水浸しになるのは珍しいことではありません。
そういう非常時に活躍してくれるのがピックアップ車両というわけです。
あとタイではピックアップ車両の荷台に人を乗せて走ることはなんら禁止されていません。
どこぞの途上国で見るような、人員満載状態で走行している光景というものはさすがに見ませんでしたが、やはり荷台に人を乗せて走っているピックアップ車は多かったです。
渋滞の多いバンコクは少しでも車の台数を抑えたいはず。
荷台で人を運ぶのは利にかなっていると言えます。
実はタイではピックアップ車両が税金面でとても優遇されています。
これがピックアップ車両人気の一番の理由でしょう。
タイでは自動車購入時に車両販売価格の何%という具合に物品税がかかるのですが、ピックアップ車両は普通自動車に比べてこの物品税が格段に安いのです。
詳しく書きますと普通乗用車(2000cc以下)―30%、エコカー指定を受けた小型車―17%、ピックアップ車―3%、ダブルキャブ(2列シートのピックアップ車)―12%。
どうですか!ピックアップ車は3%ですよ!3%!
乗用車の1/10の税率です。
優遇されすぎでしょ。笑
タイには変な荷台をくっつけたジムニーやミラがありましたが、まさにこういった理由からです。
タイでは昨年、新規自動車購入者(初めて自動車を買う21歳以上のタイ国籍者限定)に対して税金還付を行いました。
対象は、タイ国内で製造された自動車で100万バーツ(約300万円)以下の△1300cc以下の乗用車△ピックアップ車両(ダブルキャブ含)、いずれかの購入者に対して最大で10万バーツ(約30万円)を還付・・というものでした。
申請件数の多かったのはどの地方か・・全77都県中、1位のバンコクが9万5000台、2位チョンブリ県5万6000台・・(以下略)という結果で、この制度によって2012年のタイ国内の新車販売台数は143万台に達しました。
なんと前年比81%増です!
数年後には渋滞がピークになり、タイの交通機能は深刻な事態を向かえると政府は予測しているようですが・・・もうすでに深刻な事態に陥ってると思いますよ、ハイ。
ちなみにタイにも自動車の【車検制度】が存在します。
検査はなんと10年に1回!
ですが、それすら簡易的な書類のやり取りで終わる場合がほとんどで、実質「なし」に等しいとのこと。
ガソリンはレギュラーで1L90~100円くらいです。
日本の価格の半分も安くないです。
では交通機関のことにも少し触れておきましょう。
まず【タクシー】。
タイのタクシーはそのほとんどがトヨタのカローラです。
そしてなんといっても色がどれもカラフルです。
滞在中に見たタクシーの色は
・黄色×緑のツートン
・ピンク
・オレンジ(朱色?)
のおおむね3パターンでした。
個人タクシーや会社所有などの種類があるようですが、単純に色での区別ではないそうでそのあたりの見分け方はわかりません。
料金は基本的にメーター制です。
雨の日や場所が繁華街とかのいわゆる『売り手市場』の場合は乗車拒否をされることもあります。
前回の洪水タイ視察の時には何度かタクシーに乗ったのですが、今回は乗らずでした。
しかしこのピンクタクシーの色・・・
今話題のクラウンのアレとそっくりじゃないですか(笑)
続いて今タイで頭角をあらわしてきているのが【バイクタクシー】です。
バイクタクシーとは運転手の後ろにいわゆる『ニケツ』スタイルで乗って移動するバイク型のタクシーのことです。
慢性的な渋滞に悩まされているバンコクでは非常に有効な移動手段です。
オレンジのベストを着ているライダーがいればそれはバイクタクシーのあんちゃんです。
しかし・・・まあ、これも運転手の程度にもよるのですが、信号無視、逆走、急発進等々、相当荒ぶる乗り物だそうで、地元の人間でもためらう人が多いのも事実。
実際、ガイドさんもやむなく一度乗ったのだそうですが「死ぬかと思いました。もう2度と乗りたくありません。」と、言ってました。
そうは言っても、渋滞の多いバンコクではもはや欠かせない存在。
引く手数多だそうで、朝の時間ですとそこらでバイクタクシーを待つ人たちが行列を作っていました。
これから先、このバイクタクシーはもっと成長すると思います。
なぜなら、タイ人に限らず所得があがれば皆、「自家用車」はバイクから自動車に自然とステップアップしていくからです。
バンコクの交通インフラ自体を大幅に改善しない限り、自動車の流れは悪くなる一方です。
いくら自動車が増えても道路は増えませんから・・。
バイクタクシー家業はまだまだ安泰です。
そしてタイ名物【トゥクトゥク】。
やっぱりタイに来たら1度は乗っておかなければ。
乗ってテンションがハイになった結果、本レポートの素材がギッシリ詰まったデジカメをどこかで落としてしまったわけで(笑)
まあ、それだけバイク好きにはたまらない乗り物ということです。
風を切りながら渋滞の隙間を爆走するトゥクトゥクは爽快そのものです。
バイカーにはぜひ一度体験してもらいたい乗り物です。
料金メーターはありません。
料金は交渉しだいです。
「ターミナルトゥエンティーワン!ハウマッチ?」 → 「オッケイ!ヒャクバーツ!」
「パッポンショッピング!ハウマッチ?」 → 「オッケーイ!ヒャクバーツ!」
どの場所を言ってもとりあえず100バーツ(300円)と言ってきやがります。
ちなみに私が泊まっていた【ロイヤルベンジャホテル】を中心に【ターミナル21】へ行くのと、その反対方向へ行く【パッポン通り】行きでは倍ほど距離が違います(笑)
とりあえず値切ってみましょう。
逆にどの辺まで100バーツで行けるのか実験してみる価値はありそうですね。
さて、前回のレポートではトゥクトゥクは二輪を改造したものと言いましたが、ガイドさんいわく現在タイにあるトゥクトゥクの大半はその昔、ODAで日本から海を渡ってきたダイハツのミゼット(3輪車)を改造したものらしいです。
新規登録が打ち切られておよそ10年。
年々数が減ってきています。
経済が発展して移動手段が進化していけば、当然前時代の乗り物など自然と淘汰されていきます。
悲しいかなトゥクトゥクもまたその運命。
20年後にはバンコクの街からトゥクトゥクの姿は消えているかもしれませんね。
あと、タイにも【路線バス】は存在します。
しかし交通渋滞の多いバンコクではかなり不便な移動手段であるのは間違いありません。
すり抜けができないわ、車内は暑いわで・・結構キツいと思うのですが・・。
なんとバンコクのバス時刻表は、そのメインとなる「時刻」が記載されていません。
慢性的な渋滞でバスが定刻に来ることなど皆無なので書いていても意味がないのです。
どの番号のバスがどのルートを通るかという表だけあり、「時刻表」には【ここには○番と△番のバスが停まる】とだけ書いています。
せっかちな私なら間違いなくバイクタクシーに直行です。(笑)
さて、去年の暮れにタイで大々的に報道された自動車ニュースは【税金還付制度終了のお知らせ】だけではありません。
なんと、タイ市場の乗用車カテゴリーでは長年新車販売台数ナンバー1を死守してきたトヨタが、昨年12月ホンダにあっさりと抜かれてしまったのです。
12ヶ月の間に12車種のコンパクトカーを投入したホンダはシェアを30%にまで増やし、トヨタを駆逐。
さすがにこのニュースはタイ全土でも大きく報道されたようです。
焦ったトヨタは今年になってホンダのシティ(前回も言いましたが、日本で走ってたアレではない)を若干パクッた【ヴィオス】を投入するも、奪われたシェアを取り返すのにはまだまだ時間がかかる模様。
コンパクトカーの開発をおろそかにして、日本や北米でしか売れていないハイブリッドカーに開発資金を集中させていたツケが今になってジワジワと効いてきてるようです。
そのうちピックアップカテゴリーでもいすゞに抜かれたりするのでは・・と勝手な心配をしている私です。
さてさて、何度も申しましたが本視察レポートですが・・タイ最終日にデジカメを落としてしまいましたので、いつものように街の風景を見ながらのタイの日常をお届けすることができません。
折角ですから視察に直結したマジメな話でもしましょうか。
この私がマジメな話ですよ皆さん!
よほどデジカメをなくしたのがショックのようです。
さて、タイ人ワーカーの給料ってだいたいどれくらいだと思われますか?
これも地方によって上から下まで何倍もの差がありますので、一概にいくらだと言うのはできません。
私と同じ31歳男子、日系企業勤務、現場作業員、勤続3年目という人がいたとすれば、1ヶ月の給料は・・・だいたいですが10,000バーツ前後だと思っていただければいいかなと思います。
(×3をしますと日本円に換算できますので、10,000バーツ=約30,000円です。)
タイで自動車を所有しているのは工場勤務の人でもだいたい「班長以上」の役職の人になります。
さらに上を見ますと、オフィスのトップ(部長級)では月に60,000バーツ以上貰っている人もいるようです。
経済発展が著しいタイでは人件費のコストが年々上昇中です。
最近の話を言いますと、2013年1月1日からタイ全土での1日の最低賃金が全国一律300バーツに引き上げられました。
4、5年前まで1日最低賃金が約500円だったということですからここ数年で2倍に届きそうなほど跳ね上がったということになります。
それと、タイの残業手当は会社側にとってはなかなか頭の痛い仕組みになっています。
例えば8時~17時が定時だとします。
17時以降は残業になるわけですが、そこからの割り増し賃金は定時の50%増になります。
(日本では25%)
休日出勤の場合はどうか。
平日勤務のなんと2倍の手当てを支払わなければなりません。
休日のしかも残業手当となると平日定時のほとんど3倍になるそうです。
これは会社側としてはかなりイタいです。(笑)
なんせ、受注が大量にあるといって残業させまくっていると、実は人件費で儲けがほとんど飛んでしまうという事態になりかねません。
思っている以上に人件費が売り上げに対して連動しているということです。
どれだけ定時内で効率よく数をあげるかが利益確保のポイントだと思います。
タイ人の仕事のスキルはどうか。
やはり高いと思いました。
ライン現場ですと、誰一人無駄話もせず黙々と部品を組み立てています。
やはり手の動きが速いですね。
今回訪問させていただいた企業のひとつ、㈱沖データ様(プリンター製造)では、プリンターのセル生産現場を見せていただきました。
ここで見た一人のタイ人従業員の動きが忘れられません。
何百個のパーツを組み込んでいくのですが、上半身の無駄な動きが一切無くロボットを見ているような感覚になりました。
日本を始め世界各国の「現場」を見てきましたが、あんな動きをする作業員は今まで見たことが無いです(笑)
宮川化成工業㈱様(自動車の樹脂部品製造・金型製造)で見せていただいた現場では・・タイ人従業員がマシニングセンタやNC旋盤等、かなりハイテクな機械を操作していました。(機械はすべて日本製)
ちょっとビックリしました。
「タイにはこのような機械を扱える人間がそこらにいるんですか?」
とのこちらの質問には
「いいえ、実はタイで工場を立ち上げた20年ほど前に日本人技術者を連れてきましてイチから教えたんですよ」
とのことです。
やはりこのレベルの機械を扱える人はタイではまだそんなにいないようです。
傍から見れば日本の技術とさほど差が無いように思えますが・・そこはハッキリと違うのです。
金型ひとつとっても、先あたりや浮き等の摺り合わせの判断や、それを修正しながら合わせていく技術、これが金型製作ではもっとも胆になる部分で一番難しいところなんですね。
ここだけは効率化や設備投資などでは数値化できない「職人」の領域です。
やはり日本に比べて20年・30年の差があるわけです。
ただ、タイでこれだけレベルが高い技術があるのなら、日本のものづくりも油断していてはすぐに追い抜かれるのでは・・!
と危機感を抱いたのも事実です。
日本の技術力がナンバーワンであり続けるためには、誰よりも速く走り続けなければなりません。
速く走るには足の筋力が発達しているだけではダメでしょう。
体力、戦略、感覚、冷静さ・・さまざまな要因が高次元で融合して初めて実現可能となるのです。
今の日本は他のどの国よりも優れていると思います。
誰よりも先に行くために、踏み出す一歩は今よりもっともっと大きなものにしていかなければなりませんね。
さて、次回おまけ編はタイで買ったおみやげ紹介と、最終2日間に行ったカンボジアのことを少しだけ書きたいと思います。
気長に待っていただければと思います。
それでは~
イッセイ