通称「古田のおばちゃん」が定年で会社を去りました。
私が幼少の頃からいましたので、30年近く旭ノ本金属工業所にいたということになります。
私がお客様を姫路駅まで迎えに行っている間に、最後の挨拶に来て冒頭の写真のものをそっと置いて帰ったそうです。
中はクオカードでした。
会社の古くを知る人が去っていくことは、やはり寂しいものです。
「ジュースが飲みたいよ~うわ~ん!」
母親との買い物の帰りに立ち寄った会社での出来事。
カップジュースの自販機を目の前にしてイッセイ少年は地面を転げまわってダダをこねていました。
小学校の低学年くらいの頃のお話です。
「よっしゃ。おばちゃんがお茶いれたろ」
と言って、事務所の奥で湯を沸かして緑茶を淹れてくれたのが古田のおばちゃんでした。
しかし、冷たいジュースが飲みたいイッセイ少年は緑茶を一口飲みこむなり
「熱い~!こんなんイヤや~ジュースジュース~」
と、アホみたいにダダをこねるばかりです。
食い下がる古田のおばちゃんは
「あ~熱いんか。ゴメンやで。ちゃんと冷ましたの入れたるからな」
と、言ってもうひとつ、同じ湯飲みを奥から持ってきました。
「イッセイええか?お茶をな、コレに入れたり移したりしとったらじきに冷めるさかいな。今からおばちゃんが冷たいお茶飲ませたるでな」
と、言って、湯のみを両手に持ち、エンヤコラエンヤコラと右の湯飲みにお茶を入れては、左の湯飲みに移し替え~という曲芸を披露し始めました。
イッセイ少年は「おばちゃんスゲエ!」と、泣くのをやめその芸を凝視していましたが、湯飲みのフチは丸く茶の切れが悪いのか、やればやるほど机がお茶でビタビタになっていくのです。
「イッセイ、お茶冷めたで、飲みや。」
と、差し出してくれた湯飲みには・・半分くらいしかお茶が残っていませんでした。
それでも、お茶がキンキンに冷えているものだと思ったイッセイ少年は嬉しそうにお茶を口に含んだのですが、もちろん期待しているような「冷たさ」になっているわけでもなく
「熱い~!こんなんさっきと同じお茶や~!ジュース~!ジュースが飲みたいよぉおお~!!」
と、また泣きわめくのでありました。
結局、母親にジュースを買ってもらったのかどうかの記憶はありません。
少年にはお茶のインパクトのほうが強かったからでしょう。
そんな古田のおばちゃんが会社を去りました。
わかっていてもなぜか寂しいものです。
今までありがとう。
イッセイ